35mmの呼吸
update : 2020.09.20
title by エナメル
放課後、教室で逢瀬する幸村とそのクラスメイト
私の恋人は、とても甘い。
何が甘いって、私に向き合っているときの彼を包む雰囲気とか、見つめてくるその瞳とか、触れてくるその手とか、私の名前を呼ぶその声とか。
とにかく何もかも甘いのだ。
そんな彼が一際甘くなるときがある。
***
「ゆ、幸村くんっ」
「ん、なぁに? 」
寄せていた顔を少々不満げに離し、幸村くんはこちらを覗き込んでくる。私はそんな彼の体に手を添えて、ぐいぐいとその体を押した。
「ここ教室っ」
「うん。でももう遅いし、誰もいないよ」
「そ、そういう問題じゃ、」
そういう問題じゃない、と口にしようとしたのに、途中で遮られた。
彼の唇に。
「ん、……ふ、っ」
「はは、恥ずかしい?」
そんなの聞かなくたってわかっているはずなのに、彼はそれはもう楽しそうに問いかけてくる。
「ばかっ」
反射的に幸村くんの体を叩くも、それはとす、と控えめな音を立てるだけだ。
「いい加減慣れてよ、」
「無理だよ、そんな」
さらりと髪を優しく撫でられて、かぁっと顔が熱くなったのを感じた。
「そんなも可愛いけどね」
くすり。そんな風に笑って、彼がまたこちらに顔を近づけた。
思わず体を引くも、腰に回された腕に押さえつけられて。
ふ、と。
気づいたときには彼の吐息が私に触れた。
35mmの呼吸
作品数を増やそうとお題サイトを巡り巡っていたら、とても好きなタイトルを見つけました。ちょっと休憩に短めのものを作ってみました。
(2020.09.20)