140字SS

ドリーム小説

01 二度目の、お別れ黒バス/赤司征十郎 「絶対は僕だ」好きになったのは、オッドアイの彼だった。でも彼は本当の彼に戻った。 初めて会った彼は、それでも私の好きな彼だった。 「こんなオレは嫌かい?」「どんな征くんでも好きだよ」 そして、再び帰ってきた彼。彼に再会の言葉をかける時間もなく、彼は本当の彼と一つになった。 「それでも私はあなたが好き」

02 遅すぎた初恋黒バス/赤司征十郎 この歳になって初恋なんて、本当に馬鹿げている。分かっている。 自分に群がる女たちは、オレの容姿や家柄に惹かれて寄ってくるだけ。 オレの中身なんて見向きもしないで。だから初めて出会った打算も計算もない彼女に、 どうしようもなく惹かれてしまった。もう、恋愛なんて諦めていたのに。「よかったら今度、」

03 きみは知らない黒バス/赤司征十郎 「そんなに緊張しないで」手を握るとびくりと体を揺らした想い人が、こちらを恐るおそる見遣る。 伺うようなその様子に思わず笑ってしまうが、もちろんこの手を離す気は毛頭ない。 「まだ、こういうことに慣れなくて」「大丈夫、少しずつ慣れていけばいいよ」 怖がるきみの手を握った、僕の下心をきみは知らない。

04 確かなぬくもりテニプリ/幸村精市 はーっと自分の手に息を吐き出す彼女は、俺の視線に気付いて少し恥ずかしそうにはにかんだ。 「今日は冷えるね」俺の言葉にこくりと頷くと、彼女は俺の制服の袖をちょこんと摘んだ。 「私の手、あったかいよ?」「じゃあ、お言葉に甘えて」 放課後の教室は少し寒くて、きみの手はこんなにも温かい。

05 さよならを100文字で言った黒バス/赤司征十郎 「拝啓 愛しい人へ」その言葉から始まった。一度だって、言われたことがない言葉だった。 「私には時間がありません。あなたに手紙を書く時間すら、もう残されていないのです。 次にあなたに会うとき、私は私ではなくなっているでしょう。だからこれだけ伝えさせてほしいのです。愛していた、と」 揺らぐ線、差出人の名はない。

06 ヒーローにはなれない黒バス/虹村修造 そいつは手を伸ばしても届く距離にはいない。 それは心の距離であり、どうしようもない物理的な距離でもあった。 俺には家族を捨てて彼女の手を引く勇気なんてなかった。これが俺の限界。 これがまるでヒーローのようなあいつだったら、どちらも掬い取ったのだろう。 残念ながら、俺はヒーローにはなれそうにない。

07 征服されていた想い黒バス/赤司征十郎 応えてくれなかったのはきみの方なのに。そんなきみは今、勝ち誇ったように笑みを浮かべている。 私がその手を取らないわけがないと信じている。捨てた恋だった。 捨てなければと、やっとの思いで手放した恋だったのに。 終わりを迎えたはずの恋が、鮮やかに甦り私を満たしてゆく。征服される。 でもそれがいやじゃなかった。




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